ポルトガルの最高峰でリチウム採掘に反対する

リチウム電池はケータイ、パソコン、デジカメ、スマホ、そして二酸化炭素を排出しないから環境に優しいとマーケティングされる電気自動車等に使われる。小型で軽量、大容量で使い勝手がいいリチウム電池は知らない間に日常生活に欠かせないものになってしまった。特にこれから電気自動車の需要が増えれば、リチウムの需要もうなぎ上りに増えていく。

それでは、リチウムはどこで、どのように採掘され、加工されて私たちの手元に届くのだろうか。

5月初めに、ロンドンに本社を置くサヴァナ・リソーシズ社(オーストラリアの会社だという噂も聞いた)にポルトガル政府が国内のリチウム鉱脈の試験採掘を許可したというニュースが広まった。そしてあっという間に反対の署名活動が始まった。

何が問題なのか。まずはその採掘だ。リチウムが含まれている鉱脈に到達するために、ポルトガルの場合、露天掘り採掘で直径数キロ規模の広大な土地が掘り下げられる。当然、該当地にある村、農地、牧草地帯、森林などが失われる。採掘過程では間断なくダイナマイトが使用される。地下水系が分断されるせいで従来の水の供給源が断たれる。加工の過程で地下水が汚染される。さらに、採掘済みの鉱山は原状回復されず放置されるため、地元住民が採掘以前の生活に戻ることはほぼ不可能だ。

私たちの生活圏内にあるリチウムの採掘を無条件に許したらポルトガル中部から北部は蜂の巣状の、不毛の地になってしまう。危機感を覚えた、主に、北ヨーロッパからの移民で構成されるコミュニティが中心となって、リチウム採掘に反対するアクションが行なわれた。

これまでリチウム電池は便利だと何も考えずに私も使ってきた。典型的なNIMBY的(Not In My Back Yard、必要なのはわかるけど、我が家の裏庭以外に作ってね)態度だ。反省している。そして、考える。需要に合わせて供給源を開発していくという方法は、もう限界にきているのではないか。

リチウムに限って言えば、海水から採取する方法もあるという。だが、それならば環境に負荷がないと、もう簡単には考えられない。想定していない問題は起こりうる。二酸化炭素を出さない車を作るために、電気自動車の排出よりも大量の二酸化炭素を排出しながらリチウムを採掘する。矛盾が公に指摘されることは少ない。

リチウムが南米やオーストラリアなど、遠いところで、その地に住む人々の生活に多大な影響を与えながら採掘されていることはなかなか伝わってこない。ポルトガルは世界で6番目にリチウムの埋蔵量が多い。自分の足元に火がついて、人々はやっと行動し始める。

主催者発表で400人、地元のメディア発表で約500人が参加したポルトガルの最高峰シエラ・ダ・エストレラでのアクションはテレビでも大々的に放映され、新聞でも大きく取り上げられた。ポルトガル人の参加者は全体の約3分の1程度だったが、これをきっかけに「ガイジンが騒ぐ問題」ではく、当事者としての問題意識共有が広まってもらえればと思う。

(2019年8月24日、更新8月28日)

下記のリンクにはドローンによる空撮映像あり。

https://www.msn.com/pt-pt/video/rtp/foram-feitos-mais-de-90-mil-pedidos-...

写真は上から、

アクションの準備風景。山頂に布で文字を設置している。

太鼓の音で参加者を呼び集める。

続々と集まってくる参加者たち。

「命に尊厳を! さもなくば抵抗を覚悟せよ」と書かれたバナー。

参照

BBCニュース:https://www.bbc.com/news/business-49355817

ロイターによるポルトガルエネルギー省長官のインタビュー:

https://www.reuters.com/article/us-portugal-lithium-exclusive/exclusive-...

ポルトガルのホワイトゴールド・ラッシュ/田中貴金属:

https://pro.tanaka.co.jp/elements/news_cred_20181101_04.html

Bloombergニュースサイト:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-17/PGQFY56JIJUQ01>