ライナーと雌鳥の話
一ヶ月程前だったろうか。近所のカピンディ・バーにライナーがちょっと興奮した様子で入って来た。
「狐が家の雌鳥をくわえて逃げたので、その後を追いかけて走り回ったんだ」
可愛がっているご自慢の雌鳥だ。木切れを片手に、雌鳥を救わんと必死に追いかけ、狐に追いついた。木切れで狐の頭を殴りつけると、狐はびっくりした顔をして、ライナーを見上げ、鶏を落として猛スピードで森に逃げ帰った。パニクった雌鳥の方は、家とは反対方向に全速力で走り始めた。ライナーは棘のある草が生い茂る薮の中を素足で走って、やっとの思いで雌鳥を保護。
雌鳥はラッキーだった。羽毛が厚く狐の歯が皮膚に達していなかったのでショック死することなく生き延びた。ライナーもラッキーだった。彼は既に2回、発作を起こしている。雌鳥の跡を追いながら時々立ち止まって、激しく鼓動する心臓を押さえて大丈夫だろうかと心配したと言う。

ライナーの雌鳥
30年程前にポルトガルに移住して来たドイツ出身のライナーは70代。一人で暮らしている。
10年前に出会った頃、彼は人の話を最後まで聞きもせず、気に入らないと腹を立てて、横を向いてしまう様な人だった。誤解したと気付いても簡単には非を認めない難しい人だった。
2009年11月、ケータイにポルトガル人の友人からメッセージが入った。ライナーが自宅の屋根を修理中に落ちて、コインブラ大学病院に運ばれ、入院したという。
屋根から落ちたライナーは気を失ったが、気がついてから這って家に戻り、ケータイで村の友人に助けを求めた。村人が救急車を呼び、ライナーはコインブラ大学病院に運ばれ、入院。肋骨を左右合わせて、数本折っていた。私が連絡を受けたのは、彼の入院から数日してからだった。
入院は3週間に及んだ。肋骨を折ってしまったので、安静にしている他ない。何度か見舞いに行った。彼は苦手ではあったがそれでも、知り合いではある。
何がどう変わったのかは知らないが、退院したライナーは愛想が良くなった。
それにしても...ライナーには時々、ハラハラさせられる。
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