オリーブの収穫

11月に2度、オリーブを収穫した。6本ある庭のオリーブから、70キロの実が収穫できた。最初に収穫したオリーブは漬け、2度目に収穫したオリーブは搾油所に持って行った。

オリーブ色、というのは缶詰や瓶詰めで売っている塩水に漬けたオリーブの色。元々の実そのものは黄緑で、それが成熟するに従って深い赤紫色に変わっていく(オイルの含有量も増えていく)。収穫時期は実の色で判断する。

オリーブを漬ける

最初に収穫した20キロほどのオリーブは、熟した実(黒くなったもの)と未熟な実(黄緑のものと赤紫に変わりかけたもの)に分けて漬けた。漬け方が違うのである。(偉そうに言っているがオリーブを漬けるのは初めてで、インターネットで調べた)。

おおざっぱに言うと黒いオリーブはそのまま水または薄い塩水に漬け、10日間毎日水(もしくは塩水)を替える。それから濃い塩水に漬ける。熟していないオリーブは先ず苛性ソーダに15時間から48時間漬けて(もしくは灰にまぶして)灰汁を抜いてから水に漬ける。色が溶け出すので水が透明になるまで毎日替える。それから塩水に漬ける。オリーブの実そのものは口が曲がるほど苦い。漬けはじめてから食べられるようになるまで6週間から3ヶ月ほどかかる。

緑のオリーブは先ず苛性ソーダの溶液に漬けた。1ポンド(約450グラム)の苛性ソーダを5ガロン(約20リットル)の水に溶かすと書いてあった。4リットルもあれば十分なので、計算し直し、鍋に1ガロン(約4.2リットル)の水を入れて苛性ソーダを入れた。溶液の表面がぼこぼこと泡を立て始めた。鍋が熱くなる。突然、私もスティーブもせき込み始めた。悪臭はないがガスが排出されているのである。取りあえず、キッチンの窓を開け放し、ドアを閉めると居間に避難した。「間違えた、5倍も濃い溶液を作ちゃった」 少し考えてからスティーブが言った。1ガロンの水に500グラムの苛性ソーダを入れてしまったのである。このまま流したら排水管が溶けてしまう!?

スティーブが時々息を止めてキッチンに入っては水で溶液を薄めた。そのまま流してももったいないので、薄くした溶液はトイレに流した。ついでにガスコンロも掃除した。どちらもぴかぴかになった。排水管もかなりきれいになっただろう。鍋もきれいになった。

オリーブは苛性ソーダ溶液を必要な濃度に希釈して漬けた。今、緑のオリーブは月桂樹やレモンと一緒にペットボトルに入れ、塩水を入れて密閉して漬けてある。黒いオリーブはクリスマスの頃に密閉容器に詰め替える予定だ。

オリーブオイル

この辺りにはオリーブ収穫の時期だけ稼働する搾油所が何カ所もある。家庭で消費する少量のオリーブオイルの場合、収穫したオリーブを持ち込んで重量に見合ったオリーブオイルをもらう。400キロ以上の量があれば、個別に搾油してくれると聞いた。搾油所によって、渡してくれるオイルは持ち込んだオリーブの重量の5パーセントから10パーセントと幅がある。実際にどのくらいのオイルが絞れるのかは知らないが、渡してくれるオイルと実際に絞ったオイルの差が手数料である。

このところ雨が続いている。数年間続いた干ばつの後なので、雨が降っても文句を言う人は誰もいない。だが、庭仕事ははかどらない。オリーブの収穫もすべて終わらせるのに1週間かかった。収穫した実は水に漬けておけば持つ。

どんよりと曇り、時折強い雨が降る12月始めのある日、搾油所に行った。忙しい時期なのだろう、悪天候(おっと、良天候だった)にも関わらず、搾油所の前の道路には何台も車が止まっている。トラックでオリーブを持ってくる人もいる。オリーブの農家なのだろう。60キロから100キロのオリーブが入る袋をピックアップトラックの荷台から次々に下ろす。持ち込まれたオリーブは2メートル四方ほどある重量計に乗せられる。個別に搾油するものは到着した順番に、木の札を渡される。持ち込んだオリーブの重量が書いてあるのだろう。1軒で1.3トンも持ってきたところもある。少量のものは一ヶ所にまとめて積み上げられる。おばあさんが二人、10キロくらい入った袋を持ってきた。

私達のオリーブもそんなに多くはない。袋に入れて持ってくるとは知らなかったので、収穫に使った大きなバケツ2つに入れたまま、運んできた。搾油所の人が水を切ってそれを袋に入れて重さを量った。52キロ。思ったよりも多かった。渡したのはいいが、これからどうするのだろうか。1時間ほどオリーブの洗浄を見ていた。ぐるぐる回っているので、目が回ってきた。

これまで何度も通ったことがある道だが、こんなところに搾油所があるなんて思いもしなかった。隣ではタイヤを売っている。オリーブの収穫期でなければ、車の修理工場に見える。

係りのおじさんは言葉のわからないガイジンとは関わりたくないと思ったのかも知れない。外国人の顔を見ただけでポルトガル人は言葉が通じないと信じ込むと聞いたことがある。「だったら日本と変わらない」とスティーブは笑っていた。以前、彼が日本で日本人に日本語で道を聞いたら、英語でI don't speak Englishと答えられたことがある。

勝手が分からないガイジンを見かねたのか、オリーブを持ち込んだ客の一人がオリーブオイルを受け取る場所を教えてくれた。洗浄、搾油、精製課程の最後のところでタンクからできたばかりのまだ暖かいオイルを渡している。みんな、木の札を渡してオイルを受け取っているようだ。並ぶと係りの人に手招きされた。行くと何も言わないのに、オイルを計って、持ってきたペットボトルに入れてくれた。5リットルである。受付をやっている係りのおじさんかあら「あのガイジンには5リットル渡すんだよ」と聞いていたに違いない。

渡されたオリーブオイルは店で買えるオリーブオイルと比べると濁っている。洗練されてはいないが、土の匂いがかぎ取れそうなオリーブオイルだった。