イベリア半島の大停電

4月28日、11時33分。

友人夫妻と3人が乗った飛行機はポルトの空港に20分早く到着した。ターンテーブルに出てきた預け入れ荷物を下ろした直後に、停電。一時的なものだろうと、その時はあまり深く考えなかった。

薄暗い空港の中、税関を通過して到着ロビーに出て、車で近くに待機している連れ合いにメッセージを送り、ロビーのカフェで待つことに。その間、友人夫妻がATMでユーロを下ろした。停電が一時的なものではなさそうなことに気がついて、もう一度ユーロを下ろそうとしたらATMがもう機能しない。

両替商も停電だから両替できないという。地図をもらいに行った観光案内所でイベリア半島全体が停電している、と言われ、絶句。停電になる前に荷物が出てきたのは幸運だった。空港は全体的に薄暗くなっているが、こういう場合に備えてバックアップの電源はないのだろうか?

今回、連れ合いは列車で来る予定だったが、(運良く?)鉄道がストとなり、車で迎えに来ていた。ちなみに、地下鉄は電動のため、当然ながら運行していない。連れ合いの車に荷物を乗せて、混乱し始める前に空港を脱出することができた(実際に混乱したかどうかは知らない)。

予約してあった宿(アパート)のチェックインは15時以降。まず、腹ごしらえを、と近郊のマトシーニョに向かった。レストランに行くと、「生きているお金(dinero vivo)、持っている?」と店に入る前に聞かれた。停電だからカードが使えない。キャッシャーも機能しない。コメが炊けないからご飯物は出せない。コーヒーも出せない。でも、炭焼きならば大丈夫。ということで炭焼きの魚の昼食に。支払いは紙に書いて計算していた。

チェックインのため、近くに車を停めて貴重品だけを持って宿に行くと、今度はドアが開かない。アパート式の宿は暗証番号でドアを開けることになっているが、電気がないと使えない。同じ宿の宿泊客が入り口前に集まり始めた。オーナーにはなかなか連絡が取れない。やっと連絡が取れると同じようなアパートを何軒も持っているから、順番に回って鍵を開けている、少し待ってくれ、とのこと。実はこのポルトガルの「少し」は曲者なのだ。

連れ合いが入口の前で他の宿泊客と待っている間、私たちはカフェで休憩。それから散歩。少しずつ、停電の情報が入ってきた。ポルトガルとスペイン、それからフランスの一部という広範囲で停電が起こって、復旧までには最大一週間かかるだろう...。

荷物は車に残して、身軽だったのは幸いだった。取り敢えず、水とロウソクを買おう。私は友人の妻と二人で店を探しに行った。水はすぐに見つかったが、ロウソクはどこにもない。街中の個人商店は、営業してはいるが店の中は薄暗く、奥の方に行くと暗闇という状況だ。あちこち回って、水だけ買って戻ってきた。もう18時を回っている。

19時近くなっても他の宿泊客も含めた私たちは、宿のアパートの向かいのカフェでただひたすら待ち続けていた。若いドイツ人の観光客のテーブルの上にはカラになったビール瓶が林立している。電気が復旧せず、部屋に入れないようならば、ウチに帰ってくるしかないかも。暗くなる前に動きたいので、19時まであと10分待ってオーナーが来なければ出発しよう、と言っているとオーナーが現れて宿の入り口が開いた! 待っていた客が中に吸い込まれて行く。電気が復旧したわけではない。オーナーが「本物」の鍵で開錠したのだ。

無事に部屋に入ることはできた。車に積んである荷物も部屋に運び込んだ。友人夫妻が日本から持ってきた非常食(?)とワインで夕食。21時ごろだったろうか、暗いポルトを見ようと外にでる。ドウロ川を挟んでポルトの対岸、ガイアに宿をとっていた私たちがドン・ルイス一世橋に向かって歩き始めたら、電気が戻ってきた! やはり様子を見に出てきた人々が歓声をあげる。

点灯したのはガイア側の街灯。ポルト側は夜のとばりに暗く沈み込んだまま。橋の欄干に肘をついて、暗いポルトを眺めていると、誰かがガイア側の河岸で花火(準備がいい!)を打ち上げた。そのうち、ポルトのウオーターフロントから、一区ごとに電気が戻ってきた。

翌日、せっかくポルトにいるのだから、博物館の一つでも見に行こうということになった。行ったら臨時休業で入れなかったのだが、そこで一人旅の日本人男性に出会った。停電の時にどうしていたのか聞いたら、暴動が起こったら怖いから、一日中ホテルにこもっていたという。暴動が起こる可能性なんて考えもしなかった。彼は以前、ニューヨークに住んでいたと言っていた。

後日談になるが、自宅付近では電気の復旧がポルトよりも数時間早かった。気になっていた冷凍庫と冷蔵庫は無事だった。「停電は大したことなかった」、と近所の友人は口を揃えた。大きく影響を受けたのは、都会だったからなのかもしれない。

 

BBCのニュース。スペインでは警官が警備にあたったようだが、ポルトガルでは、少なくともポルトでは警官の姿はみなかった。

https://www.bbc.com/news/articles/cd6jenl581vo

 

停電に関する詳しい情報はこちら(ガーディアン紙インターネット版)

https://www.theguardian.com/world/2025/apr/28/power-begins-to-return-to-iberian-peninsula-after-unprecedented-blackout

https://www.theguardian.com/environment/2025/apr/29/what-caused-the-blackout-in-spain-and-portugal-and-did-renewable-energy-play-a-part

 

停電時にはどうすればいい? 欧州の場合(ガーディアン紙インターネット版)

https://www.theguardian.com/society/2025/apr/29/how-to-survive-a-power-outage

 

突然の停電、どうしよう!(ガーディアン紙インターネット版)

https://www.theguardian.com/world/2025/apr/30/no-one-knew-what-to-do-power-cuts-bring-chaos-connection-and-revaluation-of-digital-dependency

 

写真は上から

魚や肉を炭火で焼くレストラン

ガイアからポルトに向かうドン・ルイス一世

電気が戻ったガイアでは花火が

トゥワイライトゾーン? 右側が暗いポルト。