ドローン騒動

オランダから遊びに来た友人はドローンを持って来ていた。ある日、耳慣れない音に気付いて見に行くと、ドローンが空中静止して、私たちを見下ろしていた。手元のコントローラの画面に、ウチのネコが私たちの後ろを通る様子が映った。

チャチな初期のドローンは見たことがあるが、彼が持ってきたような本格的なものは初めてだ。「これから家の上空を一周させて360度パノラマの映像を撮るよ」と彼は何だかとっても嬉しそう。去年のお誕生日にパートナーの彼女からプレゼントしてもらった高価なオモチャだ。

4分の1周ほど回った頃、調子がおかしいと気付いた彼は、ドローンを呼び戻すことにした。高度を下げながら離陸地点に近づいてくる。高度の下げ過ぎではないかと、素人の私が思うとほぼ同時に、ドローンが空からストンとまっすぐ真下に落ちてしまった。

えっ、こんなことってあり?

いつでも冷静な友人はこの時も動じずに、「何だか電池が変だった。ちゃんと充電はしたはずなのに。探しに行こうか」

空中で見た最終ポジションは覚えている。落ちて何かにぶつかった音も、私は聞いた。どのくらい遠くにあったのかはよく分からない。敷地内に落ちたのかもしれないし、敷地外の藪の中に落ちてしまったのかもしれない。まず、庭を探してみた。影も形もない。敷地のすぐ外は他人の地所で、2メートルくらいの高さまでシダが茂り、手入れのされていないイチジクやオリーブの木にトゲのある野いちごのツルが絡みついている。

作業用のズボンに履き替えて、安全靴を履き、作業用の手袋に鉈という格好でいざ出発! 彼のスマホにはドローンの最終ポジションが表示されているが、本当に電池が切れてしまったのか、呼び出しても反応がない。重たいものではないから、シダの上に落ちているのではないだろうかと、目星をつけたエリアに下草を刈りながら入っていく。落ちた場所もだいたいわかっているし、簡単に見つかるだろうと私は思っていた。

見通しの悪い茂みの中で、知らずに踏んづけてしまったら、元も子もないじゃないの、と言うと、大丈夫、見つかったら壊れていても修理できるからと返事が返ってきた。彼は物理学者。本体が見つかればきっと何とかなるのだろう。

最初は二人で探していたが、そのうち私の連れ合いと友人のパートナーも捜索に加わった。どのくらい探していただろうか。この日は蒸し暑く、自分の汗でシャワーを浴びたような状態になった。作戦を練り直して、日を改めて捜索をすることに。

「もう、見つからないかもしれない」と友人は諦めかけていた。インターネットで調べると、落下したドローンを見つけるのはかなり難しいらしい。ついでに彼が中古のドローンを検索したら、本体ではなくコントローラや電池や充電器が山ほど出てきたという。きっとドローンを無くして不要になった付属品を売っているのだろう。

翌日、私と友人がドローンを操作していた地点に立って最後にドローンを見た方向を特定。それとスマホの最終地点情報を元に、捜索範囲を限定する。やはり、あれだけ探して見つからなかった前日の捜索エリアだった。地上、というかシダの上になければ、木の上かも。イチジクやオリーブの木には蔦が絡みついたり、落ちた葉っぱが積もったりで、上の方まで見通せない。限定範囲をこれだけ捜索しても見つからなければ、来年にこの土地の持ち主が下草を刈るまで見つからないかも、と皆が諦めモードになっていた時、ふと上を向いたら、木の上に監視カメラがあるのに気がついた。何でこんな田舎の藪の中に監視カメラが...。いったい誰が設置したのだろうかと思ってよく見ると、葉っぱに紛れてよく見えなかったプロペラが見えてきた。なんと、ドローンは木の上に不時着していたのだ。胴体とカメラの部分だけだと、監視カメラのように見える。

やったぁ! 友人の嬉しそうな顔。長い竹で枝を揺さぶり、落ちてきたドローンは無事に持ち主の元へ。野いちごのトゲで4人ともかすり傷だらけになったが、甲斐があった。事故の原因は接続不良だった。

 

写真は上から

宙に浮かぶドローン

ドローンの捜索

木の上に不時着したドローン