December 2025

皆既月蝕

9月7日の日没時に満月の皆既月蝕があるから、人が来なくて静かで、月がよく見える穴場で、月蝕を見ながら発泡ワイン(つまりシャンペン)でお祝いしようというお誘いがあった。駐車スペースに車を止めて、ちょっと険しいところもあるけれど20分ほど歩くだけ。

総勢5人と犬3頭。私たち二人、友人のジョンとベティと犬のネオ、声をかけてくれたマーティンと彼の犬2頭。待ち合わせた駐車スペースはポルトガルの最高峰エストレラ山脈を反対側に降りる、曲がりくねった道路脇にあった。私は何となく、駐車場があって、その片隅の登山口(日本だったら道標がある)から森の中を歩いて行った先に開ける眺めのいい高台を想像していた。だが、目の前にあるのはガードレールの向こう側の岩がゴロゴロと転がった斜面とその前に聳え立つ岩山だけ。

マーティンは何事もないかのように、この斜面を降りて、あの岩山に登るんだ、以前に一度、登ったことがあるから道はわかっているよ、と言う。私たち4人は顔を見合わせた。

買っちゃった!

20年前。秋になるとウチに隣接する農地で毎年、老夫婦が二人でオリーブを収穫していた。数年経つうちに、いつの間にか姿が見えなくなった。夫婦のどちらかが亡くなり、もう一人はケア施設に入った、と風の便りに聞いた。

その土地は急勾配で、狭い畑が五段重なって小川まで続く。枯れることはない、と言われたウチの井戸は酷暑の夏場に2回、枯れた。川の側に井戸を掘れば、水が確保できるだろう。あの土地が手に入ったらいいかな、と思った。10年ほど前に村の人たちに所有者が誰なのか聞いて回ったが分からずじまいで終わってしまった。

老夫婦がいなくなってから、2回ほど森林整備で下草が刈られたが、その後、放置され、いばらと雑草がぼうぼうと生え、足が踏み入れられないほどになった。雑草は夏になると枯れて乾いて、火災発生時の延焼の原因となる。不注意や故意による発火の危険性も大きい。去年(2024年)は9月に入ってから、集落内で森林火災が発生した。運良くすぐに消し止められ、家屋の被害はなかったが、村人は動揺した。森林火災の恐怖が蘇った。

「君たちの家のすぐ下のあの土地、アブナイよ」「火事になったらあそこから火が集落に入ってくるよ」 それはわかっている。だが、他人の土地なので手出しができない。村役場に陳情に行こうかと真剣に考え始めた。